海外ミステリの本棚

海外ミステリの本棚では、翻訳されたミステリー最新刊を中心にベストセラーも含め実際に読んだ感想・書評 カテゴリー/おすすめを紹介。 独自のジャンル分けや各種ベストテンランキング該当かなども掲載しています。読書頻度は1週間に1,2冊ですが、10年で1000冊を超えました。最新のミステリ情報をこちらからどうぞ。

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ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女(上)(下)/ダヴィド・ラーゲンクランツ/早川書房(2015.12.25発行)

   



訳者あとがきから「著者のスティーグ・ラーソン(心臓発作で急死)はもともと十部作にするつもりで既に第5部まではストリーを考えていた。実際に自宅パソコンの中に第4部の原稿が200ページほど残っていたといわれている。今回3部作の版元は第1部の刊行10周年を記念して、ラーソンの遺稿とは関係なくまったく新しい著者ダヴィド・ラーゲンクランツの手によるミレニアム第4部の刊行を発表」

それが本書です。

雑誌『ミレニアム』を発行するミカエルたちの会社は経営危機に陥り、株式の30パーセントを大手メディア企業のセルネル社に売り渡していた。ミカエルにも優れた記事がなく、時代遅れの記者との非難にさらされていた—

ダヴィド・ラーゲンクランツが『ミレニアム』3部作を何度も何度も読み返し、オリジナルの筋立てを練っていったのですから、面白くないわけがありませんが。

2015年8月発売されるや各国のベストセラーに。

あの名作『ミレニアム』のミカエル・ブルムクヴィストとリスベット・サランデルにまた会えたことは本当にうれしいのですが、Amazonのレビューの方が「まるで写真集を見ているよう」「あのリスベットは作者とともにいなくなり、この小説の中にいるのは別の人物」と書いていますが、全く同感です。

何も知らずに本作品を読めば評価は高いと思いますが、あの感激を与えてくれた『ミレニアム』の第4作として読むと3部作からの発展・展開がないことに気が付き、評価できません。

『ミレニアム』3部作にあった大きな展開・壮大なスケール・意外性・こんなミステリがあるのかといった驚きは全く感じません。

この作品の売れ行きに気をよくしてたぶん5作目や6作目が出ますが、売れるために出すミステリになってしまいそうで、天国からスティーグ・ラーソンの「こんな作品になってしまったのか」というため息が聞こえてきそうです。

2015年12月25日早川書房より発行

 

 - ジャーナリスト(新聞記者・雑誌編集者)もの, ハッカー(コンピュータ技術に長けた人物)もの, 評価: ☆☆