海外ミステリの本棚

海外ミステリの本棚では、翻訳されたミステリー最新刊を中心にベストセラーも含め実際に読んだ感想・書評 カテゴリー/おすすめを紹介。 独自のジャンル分けや各種ベストテンランキング該当かなども掲載しています。読書頻度は1週間に1,2冊ですが、10年で1000冊を超えました。最新のミステリ情報をこちらからどうぞ。

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災厄の紳士/D.M.ディヴァイン/創元推理文庫(2009.9.30発行)

   

パリのメトロの車内で地図を落とした娘にネヴィル・リチャードソンは声をかけた—-
大きな謎が早くから読者に提示され、それが何か知りたくて先を読まずにはいられない素晴らしい構成!!
しかし、『ミレニアム1~3』のようにベストセラーにならなかったのには訳がある。
最後の謎解きの部分が不十分で(短すぎる)かつ納得がいかないところがあり、手をぬいたとしか思えない。最後にきて本当にがっかくりときた。それまでは素晴らしい作品なのに。
本書は1971年発表のディヴァインの7作目の邦訳書
☆本格ミステリ・ベスト10海外2010探偵小説研究会(原書房)(2009年)第1位
☆2009年週刊文春ミステリベスト10(海外)第8位
☆このミステリーがすごい!2010年版(2009年)ベスト20宝島社第14位
2009年9月30日創元推理文庫より発行

ここからは読後にお読み下さい。
謎解きの大きなポイントになる「手帳」についての解説は全く不親切・不適切でかつ不十分。
自分のミスかもと思って、読み返してみたけれど全く納得がいかない。ここでも推理を働かせて犯人は優秀なのだからとか勝手に考えろというのが作者の考えなら、その考えはうけいれがたい。
ミステリマニアには全部を説明しないそこがよいのかもしれないけど。 
ネヴィルの暗号が役にたたなかったことの理由・訳に全く触れないのは全くミステリ(!?)です。
事件の経緯も納得できるものではなく、説明も十分とはいえず、納得できずに読み返さなければならないミステリなんてある意味最悪。
最後まで推理を楽しめたミステリだけに、最後の謎解きに力を入れてきちんと納得させてほしかった。
なお、この作家の作品は、翻訳されるたびにミステリ・ベストテン入りしている。
悪魔はすぐそこに』(1966)邦訳2007年9月28日創元推理文庫より発行
ウォリス家の殺人』(1981)邦訳2008年8月29日創元推理文庫より発行

 - 2009年, 2010(2009年), 2010年版 (2009年), 2010年版(早川書房), 評価: ☆☆☆