海外ミステリの本棚

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シャンタラム(上)(中)(下)/ゴリー・デイヴィッド・ロバーツ/新潮文庫(2011.11.1発行)

      2015/12/29




この作品を紹介するのに余計な言葉は入りません。

全て本文からの抜粋だけで足りてしまいます。
「男はいい女の愛を勝ち取り、その女に尊敬され、信頼されつづけて初めて、本物の男になる。そうなれるまでは男じゃない」

「人は生きているあいだに三人の師と三人の友と三人の敵と三人の心から愛する者を得る運命にある。しかし、それら十二人の真の姿は常に隠されていて、相手を愛したり相手と別れたり戦ったりしてからでないと、誰がどれなのかは決してわからない」

物語は本文の最初のページに要約されています。
「私の人生の物語は長く、込み入っている。私はヘロインの中に理想を見失った革命家であり、犯罪の中に誠実さをなくした哲学者であり、重警備の刑務所の中で魂を消滅させた詩人だ。さらに、ふたつの看視塔にはさまれた正面の壁を乗り越え、刑務所を脱獄したことで、わが国の最重要の指名手配犯にもなった。そのあとは幸運を道づれに逃げ、インドへ飛んだ。インドではボンベイ・マフィアの一員になり、銃の密売人として、密輸業者として、偽造者として働いた。その結果、三つの大陸で投獄され、殴られ、刺され、飢えに苦しめられることになる。戦争にも行き、敵の銃に向かって走り、そして、生き残った。まわりでは仲間が次々と死んでいったが、その大半が私などよりはるかにすぐれた男たちだった。何かの過ちで人生を粉々に砕かれ、他人の憎しみや愛や無関心が生み出す運命のいたずらに、その人生を吹き飛ばされたすぐれた男たちだった。私はそんな彼らを埋葬した。多すぎるほど埋葬した。埋葬しおえると、彼らの人生と物語が失われたことを嘆き、彼らの物語を私自身の人生に加えた。」

<作家紹介 グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ>
1952年、豪メルボルン生れ。
十代から無政府主義運動に身を投じるも、24歳のときに離婚で娘の親権を失い、その精神的衝撃で重度のヘロイン中毒に。

1977年、ヘロインを買うカネ欲しさに銀行強盗(被害が保険で補償される金融機関だけを選び、スリーピース姿で”Please”と丁重に金を要求したので”紳士強盗Gentleman Bandit”と呼ばれた)26歳で逮捕

服役中の1980年に重警備刑務所から白昼堂々と脱獄。暴走族やかつての革命仲間に助けられてニュージーランドに潜伏した後、30歳のときに手製の偽造パスポートを使ってインドのボンベイ(ムンバイ)に渡る。

1982年、スラム住民のために無資格・無料診療所を開設。その後、ボンベイ・マフィアと行動を共にし、アフガン・ゲリラにも従軍。

タレント事務所設立、ロックバンド結成、旅行代理店経営、薬物密輸の後に再逮捕され、残された刑期を務め上げる。

2003年に『シャンタラム』を発表し、現在もインドの貧困層を支援するチャリティ活動に奮闘中。

 - ノワールもの, ラブストーリー, 評価: ☆☆☆☆☆