海外ミステリの本棚

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見知らぬ顔/アン・ペリー/創元推理文庫(1995 .9 .20 発行)

      2015/11/18


スコットランド・ヤードの警部<ウィリアム・モンク>シリーズの第1作

☆アガサ賞最優秀長編賞ノミネート作品

舞台は19世紀半ば、クリミア戦争「(1853-1856年)は黒海沿岸の覇権をかけて、ロシアとオスマン・トルコ、さらにトルコを支援するフランスやイギリスなどヨーロッパ諸国の間で起こった戦争」が終わった直後の英国

ナイチンゲールが医療体制の改革に努力してその名を上げたクリミア戦争。

当時の女性が普通に生きるために、自立するためにはどれほどの困難な道が待っていたのか。その当時の世界が目に見えるように描かれています。

現在でも女性が普通に働くための環境がまったく整っていない日本では同じような茨の道が女性の前に立ちはだかっています。
ウィリアム・モンクは病院で目を覚ましたとき、自分の名前すら頭に浮かんでこなかった。

見舞いに来た男からのわずかな情報を元に動き出し、記憶喪失を隠して職場に復帰する。

嫌われていた上司から命じられたのは、迷宮入りになりかけた難事件グレイ少佐殺害事件だった—

主人公の置かれた状況の過酷さは、作家自身の生い立ちと切り離せない気がします。

心理描写が巧みで、読まずにはいられなくなる歴史警察ものミステリ。

本文からの抜粋をお送りします。
「生身の人間は、若い頃に夢見た理想の人間よりも多くの勇貴や寛大さや許すということを必要とするもので、だからこそいっそう愛おしい存在なのだ」

本国では既に第20作まで刊行されています。

1995年9 月20 日創元推理文庫より発行 原題は「THE FACE OF A STRANGER」(1990)

<ウィリアム・モンク>シリーズ
第1作本書『見知らぬ顔』
第2作『災いの黒衣
第3作『護りと裏切り
第5作『偽証裁判』※第4作は翻訳されていません。

作家紹介 アン・ペリー イギリスの人気作家 二つのシリーズで有名
①モンクシリーズ 舞台は19世紀半ば
②トーマス・ピット警部シリーズ 舞台は19世紀後半
15歳のときに、友人と共謀して友人の母親を殺害。殺人罪で起訴され、無期懲役刑に。
21歳まで5年半服役。2度とその友人と会わないという条件で釈放。このときの事件は映画化され日本でも「乙女の祈り」として上映された。
イギリスに渡りミステリ作家として成功。

 - 歴史ミステリもの, 男性刑事(捜査官)もの, 評価: ☆☆☆☆☆